bee: August 2005 - Archive

アイランド

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日本での封切り前から、本国米国では、とかく興行的な失敗がクローズアップされていて、いささかカワイソウな感じのアイランドですが、私はなかなか面白い映画だと思いました。

舞台は近未来の地球。自分たちが、”いざという時の肉体のスペア”として商品化されていることを知らずに、一個の人間としての暮らしを送っているクローンたちが、ある日自分たちの本当の存在理由を知ってしまい・・・・、というお話。

タイトルが「アイランド」なだけに、アイランドという単語を軸に映画を捉えてしまいがちですが、アイランドという言葉自体にはさして重要な意味はありません。アイランドというタイトルによって喚起されるイメージ(ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ)と、実際の映画の内容がイマイチ結びつかないというのも、興行成績に影響しちゃったのかも。実際に映画の主軸となっているのは、クローンの行き先(アイランドね)ではなく、クローンは人間か否か、という点や、人間のコピーに尊厳は必要か?ということだと私は解釈したので、そんなイメージでタイトルつければ良かったのになあと思いました。(クローンを作ることで)人は神になれるのか?、というテーマもまた、この映画のテーマのひとつでもあったっぽいので、神に対する認識の濃ゆいアメリカではその点にクローズアップしても良かったのかも。いい加減な憶測ですが。

人間であれクローンであれロボットであれ、何かの管理下にいたものが、ある日自我に目覚めることでストーリーが動く、というテンプレートは、SF映画に頻出のテンプレートですが、私はそういうテンプレートにのっとることは別に悪いことではないと思っている方なので、この映画に対して「ありきたりなストーリーだわん」という感想は持ちませんでした。むしろ、クローンを作ると言うことがまだSF的な妄想の範疇にあった時代のクローン映画と、この映画とを見比べてみたいなーという気持ちになったのでした。

ちょこちょこっと挿入される小ネタっぽいギャグはなかなか面白いし、近未来の日常生活を示すちょっとした小道具も、夢をくすぐる感じで画面に見入ってしまいました。言うほどつまんない映画じゃないじゃーん、と思うんだけどなあ・・・。

余談ですが、この映画のプロデューサーとその妻は、米国での興行成績の不振を受けて、あちらの雑誌のインタビューで”ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンの演技がイケてなかった”というような愚痴をこぼしていたんですが、大人げなくてカッコ悪いエピソードですね。制作スタッフは一枚岩であってほしいなーと映画制作の現場にロマンを感じる私は思ってしまいました。
すごい映画ですた。老トレーナーと女性ボクサーの栄光と挫折の物語・・・とか言っちゃうと陳腐な感じですが、実際テンプレ通りのストーリーです。展開が読めないハラハラドキドキ感はゼロで、こうなるんだろうなぁと予想するとおりにストーリーは展開します。最初から最後まで、クリシェのみで展開するストーリーと言ってもいいくらい。と、言うとつまんない映画のようですが、そうではなくて、クリシェだけで観客を泣かせる映画なんです。アスリートとマネージャーの栄光と挫折っていうテーマは、映画だけじゃなくて、マンガや小説でも題材としてほんとにたくさん扱われているだけに、一定のレベルのものにすることは、パターンを熟知していればわりとラクなことですが、逆に頭ひとつ飛び出るようなそれこそアカデミー主要4部門を総なめにするようなレベルのものにするのはすごく大変なことだと思います。基本的な料理をおいしく作るのがとても難しいのと同じで。それをやってのけたクリント・イーストウッドはやっぱりすごい監督なんだと思います。

クリント・イーストウッドとモーガン・フリーマンの演技がすごいのはもちろんなんだけど、ヒラリー・スワンクがとても良かったです。美人ではないんだけどとても魅力的。なんか馬に似てるなーと思ってたけど、私はこの作品で彼女のファンになりました。こぼれ話ですが、ヒラリー・スワンクはアカデミーの受賞直後に、レッドカーペットで着ていたドレスのまま、そこらへんのファーストフードでハンバーガーを齧っている姿がパパラッチされてました。しかも傍らにトロフィーを置いて。かっこよすぎてしびれます。

おまけに、私の大好きなトレイラートラッシュ(南部の貧乏白人です)がアホなことを言いまくってたり、ヒラリースワンクの筋肉が超クールだったり、モーガン・フリーマンのちょっとした見せ場が老人愛にはたまらなかったりで、超個人的に好みな映画でもあったりしました。

かなりブルーなストーリーなので、好みは分かれるところ(女性にはあまり受けないかも・・・)ですが、しっぽり気分の週末の夜とかにオススメの映画ではないでしょーか。

バットマンビギンズ

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「インソムニア」「メメントの」のクリストファー・ノーラン監督がバットマンを撮る!とか、渡辺謙が出演!とか、何かと話題だったバットマンビギンズですが、個人的には「アメリカン・サイコ」でヤッピーのサイコ殺人鬼を演じたクリスチャン・ベイル(最近では「マニシスト」の役作りでの30kg近い減量で話題になりましたね)がバットマンを演じるということにつられて観にいきました。

結論から言うと、私的には映画としてはイマイチでした。もともと私はストーリーにはさほど重きを置かずに映画を観るタイプなのですが、それでも筋の詰めの甘さが気になりました。バットマンがいかにして生まれたか、というテーマである以上もうちょっと頑張ってほしかったなーと思ってしまいました。インソムニアで繊細な心理描写を見せた監督なだけに残念。監督の罪ではありませんが、字幕がやぼったいのもテンション下がりました。

で、ヒーロー映画に不可欠な、ヒーローそのものを魅せる、という部分についてもちょっと物足りない感じ。サム・ライミのスパイダーマンと比べると明らかに物足りない気がします。監督のタイプが違うので仕方ないですけど。

さらに言うと、ヒロインが気に入らない・・・ってコレは明らかに好みの問題ですね。ケイティー・ホームズといえば、昨今トム・クルーズとの熱愛報道でアメリカのタブロイド誌を賑わせている女優ですが、彼女の最近のパブリックイメージと役柄の自立した女性像がどうもしっくり来ない気がして。トムに釣られて新興宗教(サイエントロジー)に入信するわ、トムに言われて仕事は蹴るわ、トム・クルーズ本人もケイティとの交際報道以降は奇行が多いし・・・という。なんかキモチワルイ女優だなーというのが私の個人的なケイティ感なので、ヒロインとしては気にいらないという感じになったのでした。

そんなこんなで映画としてはけっこう不満ではありますが、ディティールを観ると良い部分もあって、例えば、マイケル・ケイン演じる執事がいい味だったり、バットモービルがエライことになってておもしろかったりするので観ていて退屈、ということはありませんでした。それに、なんだかんだいいつつも、クリスチャン・ベイルのPVとして観るとパーフェクトな仕上がりなので私は満足なのです。ムフ。

Mr.インクレディブル

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恥ずかしながら、初めてのpixer作品です。が、間違いなく2005年度にTV・劇場で鑑賞した映画の中で抜群に面白かった映画です。

元ヒーロー一家の冒険活劇アニメーション。単純明快にして健全なストーリーです。よっぽどひねくれた人間でなければさわやかに楽しむことができるはず。キャラクターの肉付けも良く練られているので、誰もが「このキャラクターが一番好き!」っていうキャラを見つけられるようになっています。(←このへんはディズニー仕込みの巧さだなーとおもいます)で、もちろん基本ターゲットは家族連れなので、子供が退屈しないカラフルさとテンポの良さに加えて、大人も楽しめるしんみり感とちょっとした小ネタも盛り込まれています。

私がスゲー!と感じたのは、CG技術がきちんとストーリー上の演出として効果的に機能している、ていうことでした。それって当然では?と思うかもしれませんが、実際はそうでもないと私は思っています。CGアニメーション映画の陥りがちな失敗に、「こんなに技術があるんです」というアピールに終始してしまって、技術の持つ効果を生かしきれないということがあります。たとえばファイナルファンタジーの映画版。「髪の毛100万本を手描きしたった!」と威張ってみたものの「へー」で終わってしまったという。技術力だけでは感心はされこそすれ感動はされないのですね・・・。
で、私がインクレディブルを良いなあって思ったのは、「こういう映画を作りたい」という明確な野望(?)があって、その野望を果たすために高い技術が用いられるってことであり、高い技術があるから「こういう映画を作りたい」っていう野望を抱くことができるっていう、志しと技術の良いバランス関係があるからなんですね。クラフトマンシップというか、職人魂というか、そういうのがカッコイイなーと思いました。

おまけに、DVDの特典映像が秀逸。興味深いメイキングもさることながら、おまけのムービーが楽しい!普段は特典映像は観ないで終わってしまう人も、インクレディブルの特典映像だけは観てほしいなーと思います。

ホットチック

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なんでこんな面白い映画を劇場で公開しないのだろう、日本という国は。もう沈没したほうがいいと思います。

あらすじは超シンプル。学園のアイドル女子高生とオッサンの体が、呪いにかかって入れ替わってしまってドタバタ・・・というおはなし。舞台はアメリカですが、アメリカンカルチャーや登場人物の予備知識は一切不要。老若男女、バカ映画を愛する人なら誰でも楽しめる親切設計です。ちなみに私は何も知らずにWOWWOWの放映を観てかなりびっくりしました。快作にして怪作です。

主演のロブ・シュナイダーと監督&脚本のトム・ブレディはともにSNL出身のコメディアン俳優・・・と言えば、お好きな人にはわかるはず。日本では知名度低いけど、本国ではトム・クルーズ並みのセレブリティです。日本で言ったらダウンタウンとかタモさんクラスでしょーか。(このへんの憶測は適当です)

ロブシュナイダー扮する女子高生(肉体はオッサンだけど中身は女子高生だから)が、超おもしろいです。具体的なエピソードを語るとあまり面白くないのでここでは触れませんが、ともすれば陳腐な「とりかえばや物語」が、ロブシュナイダーが演じると抱腹絶倒になってしまうんだからすごいなーと思います。

その日一番観たい映画にはなり辛いけど、いつ観ても面白い映画ではあります。ツタヤなんかで何を借りるか迷ったときにオススメします。

以下は私の個人的な思い入れを語るので目をつぶって読んでください。

ヒロインを演じるレイチェル・マクアダムスは、「ミーンガールズ」でもイジワルな学園のクイーンを演じた、絵に描いたようなアメリカンブロンドガールで、私が個人的に大好きな女優さんです。メインの役として出演した映画本数は少なくて、ホットチックとミーンガールズぐらいなんだけど、女子高生役ばっかりやってる割にけっこういい歳っていうのもグっときます。イジワル顔もキレた演技も、どっちも上手で素敵です。

この映画の題材にもなっている、アメリカのハイスクールカルチャーって、妙に大人っぽくてアメリカナイズされた(アメリカだから当然だけど)部分と、所詮は十代のガキっぽい部分がごた混ぜになっていて、群像劇の素材としてすごく魅力的だと思います。

アメリカのハイスクールの、JOCKS vs NERDS (日本でいうところの、イケてるグループvsオタクなグループ、て感じ)の図式は、コロンバインハイスクールの銃乱射事件なんかでも注目された子供社会の問題で、ちょっと笑えない現実があったりします。で、最近の学園コメディものの映画では、JOCKSとNERDSの歩み寄りとか、JOCKSの凋落とか改心なんかが最終的に描かれたりしていて、それがカタルシスになってたりするんですが、この現象って、作り手の問題意識ってこともあるのだろうけど、表現者の多くはNERDS出身で、JOCKSに対するルサンチマンがあるってこともあるのかもなーなんて思いました。B級映画のパワーの理由がちょっとわかったような気がしたのでした。

スーパーサイズミー

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アメリカ人にとっては”自国の社会問題を再認識させられる映画”だけど、日本人にとっては”アメリカ人のバカさ加減を再認識させられる映画”です。なのでアメリカ人以外の国の人は笑って観たんじゃないでしょーか。アカデミーの受賞もアメリカのアワードだからこそ、という気がします。

映画の内容をおおざっぱに説明すると・・・
■一ヶ月間、食事の全てをマクドナルド製品にする。
■その際、「スーパーサイズになさいますか?」と店員に尋ねられた場合、問答無用で「ハイ」と答えなくてはならない。
■尚、全ての食事を残してはいけない。
というルールのもと、一ヶ月間マクドナルド漬けの生活をすると、人間の肉体はどのように変化するかという実験を記録したものが本作です。

毎日マクドナルド食だなんてアホか!、とわれわれは思ってしまうところですが、こういった食生活がさほど珍しくはないのがアメリカという国なのですね。事実、数年前には毎日マクドナルドのハンバーガーを食べ続けた結果、超肥満になってしまったという少女二人が米マクドナルド社に対して「有害な食品を販売していることを表明する義務を怠った」として訴訟を起こしています。でもって、アメリカでは、低価格で手軽な食事=ファーストフード、なので、低所得者層の人はどうしても「スーパーサイズミー的な食生活」になりがちなのが現実。日本みたいに、粗食=健康食、ではないので貧乏人ほど肥満になりやすい国がアメリカなんです。お気の毒というかバカだなーというか早くなんとかしなさいよというか。

実験の過程や結果もショッキングで興味深い映像ですが、ちょろちょろっと登場するマクドナルドジャンキーの人々(すごいよ)の姿や、米マクドナルド社の巧妙な宣伝戦略の内容も面白く、音楽もいい感じなのでドキュメンタリーながら退屈することなく鑑賞できました。

問題は、観終ったあとに強烈にマクドナルドに行きたくなるってことですかね。

Author

映画と猫と旅行が好きな
70年代後半うまれの女性

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観なきゃ良かった。

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