舞台は近未来の地球。自分たちが、”いざという時の肉体のスペア”として商品化されていることを知らずに、一個の人間としての暮らしを送っているクローンたちが、ある日自分たちの本当の存在理由を知ってしまい・・・・、というお話。
タイトルが「アイランド」なだけに、アイランドという単語を軸に映画を捉えてしまいがちですが、アイランドという言葉自体にはさして重要な意味はありません。アイランドというタイトルによって喚起されるイメージ(ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ)と、実際の映画の内容がイマイチ結びつかないというのも、興行成績に影響しちゃったのかも。実際に映画の主軸となっているのは、クローンの行き先(アイランドね)ではなく、クローンは人間か否か、という点や、人間のコピーに尊厳は必要か?ということだと私は解釈したので、そんなイメージでタイトルつければ良かったのになあと思いました。(クローンを作ることで)人は神になれるのか?、というテーマもまた、この映画のテーマのひとつでもあったっぽいので、神に対する認識の濃ゆいアメリカではその点にクローズアップしても良かったのかも。いい加減な憶測ですが。
人間であれクローンであれロボットであれ、何かの管理下にいたものが、ある日自我に目覚めることでストーリーが動く、というテンプレートは、SF映画に頻出のテンプレートですが、私はそういうテンプレートにのっとることは別に悪いことではないと思っている方なので、この映画に対して「ありきたりなストーリーだわん」という感想は持ちませんでした。むしろ、クローンを作ると言うことがまだSF的な妄想の範疇にあった時代のクローン映画と、この映画とを見比べてみたいなーという気持ちになったのでした。
ちょこちょこっと挿入される小ネタっぽいギャグはなかなか面白いし、近未来の日常生活を示すちょっとした小道具も、夢をくすぐる感じで画面に見入ってしまいました。言うほどつまんない映画じゃないじゃーん、と思うんだけどなあ・・・。
余談ですが、この映画のプロデューサーとその妻は、米国での興行成績の不振を受けて、あちらの雑誌のインタビューで”ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンの演技がイケてなかった”というような愚痴をこぼしていたんですが、大人げなくてカッコ悪いエピソードですね。制作スタッフは一枚岩であってほしいなーと映画制作の現場にロマンを感じる私は思ってしまいました。