bee: July 2010 - Archive

基本的に、人様が一生懸命作ったものに対して文句をつけるのは主義に反するので、このブログではどんな映画について語るときもなるべく良いところに目を向けて感想を書くようにしてきました。が、今回ばっかりはごめんなさい。

漫画や小説の映画化に対して烈火のごとく怒る原作ファン、に対して「そんなに怒らなくてもそれはそれとしておけばいいんじゃない?」などと、今まで冷淡な態度を取ってきたことをここにお詫びします。やっとその気持ちがわかりました。

「私の観たいアリスの世界」からはあまりにも遠すぎました。別のタイトルでやってほしかった。ティム・バートンは、不思議の国のアリスが持っている、チェシャ猫やマッドハッターやバラやお茶会のモチーフが欲しかっただけなんじゃないか、とすら思います。ティム・バートンとジョニー・デップがネームバリューと、アリスの持つ普遍の魅力を利用して、つまらない冒険映画を自分たちのやりたいように撮ってアコギな商売をした、というふうにしか見えないです。

ポスターにでかでかと書かれていた"戦うアリス"っていうコピーに違和感を感じて劇場で観ずにいた(飛行機で観ました)のは正解でした。アリスは武器を持って戦ったりしません。ルイス・キャロルだって草葉の陰で泣いているに違いありません。

かように映画の大前提に対して疑問符を持っている状態で観たので、ストーリーについても全く楽しめず。違和感だけが募りました。予言の書や妙な怪獣という、アリスの世界に明らかにそぐわないモチーフもとても不快でした。原作の世界観が好きな人にとっては、アリスの世界に「予言」なんていう概念を持ち込むこと自体が、とんでもないナンセンスと感じられるのではないでしょうか。

そして、ジョニー・デップの厚化粧が見るに耐えないです。マッドハッターは確かに特異のキャラクターだし、テニエルの挿絵でも不気味な姿ですが、それにしたってあれはない。顔芸だけでマッドハッターが演じられると思わないでもらいたい。こんなのただの好き嫌いだし、言いがかりレベルの感想だってわかってるけど、別の題材でやってください、と言いたいのです。

「アリスインワンダーランド」というタイトルのもとに、ていのいい舞台装置として不思議の国を利用したこの映画、その舞台装置が取り去られたら、そこにはいったい何が残ったのか、と思います。

Author

映画と猫と旅行が好きな
70年代後半うまれの女性

★Stars

★★★★★
何度でも観たい。
★★★★
おすすめ。
★★★
悪くない。
★★
人には薦めない。

観なきゃ良かった。

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