comedy

ばかの方舟

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これはすごい。短期間に3回も見返してしまいました。

東京で商売(妙な健康飲料の自主販売)に失敗して借金を作った冴えないカップルが、もう一度商売をやり直すべくイナカに帰ってみたものの、全くうまくいかずにさらに駄目なことになる、というストーリー。面白くなさそうなストーリーなんだけど、最高に面白かった。

とにかく主人公の男のダメ人間設定の完成度の高さがすごい。その設定が緻密に脚本に浸透しているために、開始30分、二人の一挙手一投足に「学力がない」「常識がない」「センスもない」「その上に運も悪い」「それなのに根拠のない自信を持っている」ということを示す要素がぎっしりと、しかし自然に詰め込まれています。

説明的なセリフやシーケンスはほとんどないのですが、観る者に、主人公に限らず登場する人間の、主人公との関わりを、すんなりと理解させる巧みさにはびっくりしました。軽薄な表現だけど、「話題にもならないくらい些細な"あるある"」の連鎖と言えるかもしれません。そして、その"あるある"の切り取りと組み合わせのセンスが卓抜しているから、この映画が成立しているのだと思います。

ダメな主人公と、共依存的にくっついている恋人の女の子の、悲しいまでに滑稽で愚かな毎日は、基本的にはものすごく面白く、笑いの対象です。
だけどその中に、笑いながらも「ここ実はちょっと笑えないのはナイショにしときたいな・・・」っていう気持ちにさせられるものが含まれています。

"バカあるある"を笑うっていうことは、ある部分で自分を笑うことでもあり得るわけですから、フクザツな気持ちになってしまう箇所がどうしたってあるわけです。そしてそれって、ちょっとしたノスタルジーにも通じていく感情でもあるので、単純に「バカが滑った転んだを観てワハハと笑う」という類の映画をみたときとは異なる、深みのある後味を残す結果になっているのだと思いました。

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★★★★★
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「40歳の童貞男」のジャド・アパトゥ監督の2作目。ダメ男がクラブで出会ったキャリアウーマンを、うっかり妊娠させてしまってドタバタする映画です。

ジャド・アパトゥは、男の人がウダウダダラダラ好きなことをやってダメに暮らす様子を描くことに、監督的なフェティシズムを持っていると思います。ゆえに超ダメ人間の生活を箱庭的に作るのがとても上手なので、それを覗き見る楽しみこそがこの映画の一番の魅力だと思いました。

ストーリーは、いうなれば"箱庭の箱"に相当している感じなのですが、それも良かったと思います。前作の「40歳の~」は、ハートウォーミング要素を詰め込みすぎた結果、コメディとしては散漫な印象であまり好きではないのですが、この映画はダメ男描写に重点を置いたことで、かえってダメな人に対する監督のやさしい視線みたいなものが鮮明に浮かび上がったように感じました。

スラッカー・ムービー愛好家にはとてもおすすめ。

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★★★

エルフ

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ウィル・フェレル扮する、北極のサンタさんの工房で働くエルフたち・・・の中に諸般の事情で混じっている”エルフとして育った人間”の男が、父親に会いにNYにやってくるというストーリー。大男(190センチ)のウィルが、白いタイツにとんがりお帽子で「ダディ~!」とか言って飛び跳ねまくる姿が気持ち悪すぎます。ウィルは大好きですが若干やりすぎ感が漂う気もします。

クリスマスも近いことなのでそれらしい映画を、なんて言って、何も知らずにこの映画をレンタルしてしまう人、多いんだろうなあ・・・。心から同情します。

アンカーマン

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邦題は「俺たちニュースキャスター」なのですが、あまりにも締まらないタイトルなので原題を採用。大好きなウィル・フェレルのほか、ヴィンス・ボーン、ジャック・ブラック、ベン・スティラーといったアメリカンB級コメディの常連が山盛り出演していてお好きな人にはたまらないキャスティング。個人的には大好きなクリスティーナ・アップルゲイトが出演していて嬉しかったです。筋はバカバカしいのでストーリーに期待せずに、コントを見るような気持ちで観るのが良さそう。

40歳の童貞男

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期待はずれだったなー。友情やら愛情やら、あれもこれも盛り込みすぎで散漫な印象。もっとおもしろくなりそうなモチーフなだけに惜しい。2chで童貞の悲哀のこもる発言を拾ってマッシュアップしたほうがおもしろいものができそう。

スネーク・フライト

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あえてコメディカテゴリーに入れておきます。飛行機が!毒蛇で!いっぱいに!ギャー!みたいなばかばかしいパニック映画。素晴らしいです。ハゲたオッサンが大蛇に丸呑みされたり、トイレで便器から顔を出した蛇に局部を噛まれたり、というような漫画的なネタが満載です。涙ありポロリありカタルシスありではありますが、それは言うなればお刺身のツマに過ぎず、あくまでも主人公は蛇(と蛇に噛まれて死にまくる乗客乗員)です。ゾンビやエイリアンといった「やたらしつこくて大量でなんかもう途中でうんざりしてくるくらい強い敵」が登場するパニック映画好きにとっては、観るだけでテンションが上がる超オススメの作品です。

そして、エンディング曲も最高。公募で選ばれた Cobra Starship というウルグアイ(!)のロックバンドによるものなのですが、アメリカ人が忘れてしまった能天気なロックスピリッツはウルグアイで確かに継承されている!ということを示す名曲です。ダンスロック好きは是非。

最凶女装計画

| | TB-0
オカマモチーフのたいへん下品なコメディ。ではありますが、白人上流社会への風刺とアフロアフリカンのプライドに満ちていて、悪くないと思います。万人にはおすすめしづらいけど。パリスヒルトンを半笑いでウォッチしている向きには確実にオススメの一本です。
ウィルフェレル・オーウェンウィルソン・ヴィンスボーン・クリストファーウォーケン、というコメディ的に超豪華クレジットで文句なし。ヒロインが私の大好きなレイチェル・マクアダムスなのもうれしかった。ストーリー?そんなのはどうでも良いのであります。
ビターなブリティッシュユーモア×ゾンビという組み合わせがこんなに合うなんて!モチーフがゾンビなので、パニックムービーではあるのだけど、観ていて疲れるドタバタ映画では断じてありません。ゾンビ映画はあまり好きではない私でも、たいへん楽しく鑑賞できた映画でした。こんなに面白いのに日本未公開だなんて、まったくもって残念なことです。(DVDは発売中です
原作とは相当遠い内容になっているものの、むちゃくちゃかつB級なノリでおもしろかった。ニコールキッドマンが、化け物みたいに美しかった。マシュー・ブロデリック 、ベット・ミドラー 、グレン・クローズ 、クリストファー・ウォーケンという豪華なキャスト、なのにB級。こういう映画大好き。セットや小物がクラシックアメリカンなテイストでくすぐられます。

ホットチック

| | C-1 | TB-0

なんでこんな面白い映画を劇場で公開しないのだろう、日本という国は。もう沈没したほうがいいと思います。

あらすじは超シンプル。学園のアイドル女子高生とオッサンの体が、呪いにかかって入れ替わってしまってドタバタ・・・というおはなし。舞台はアメリカですが、アメリカンカルチャーや登場人物の予備知識は一切不要。老若男女、バカ映画を愛する人なら誰でも楽しめる親切設計です。ちなみに私は何も知らずにWOWWOWの放映を観てかなりびっくりしました。快作にして怪作です。

主演のロブ・シュナイダーと監督&脚本のトム・ブレディはともにSNL出身のコメディアン俳優・・・と言えば、お好きな人にはわかるはず。日本では知名度低いけど、本国ではトム・クルーズ並みのセレブリティです。日本で言ったらダウンタウンとかタモさんクラスでしょーか。(このへんの憶測は適当です)

ロブシュナイダー扮する女子高生(肉体はオッサンだけど中身は女子高生だから)が、超おもしろいです。具体的なエピソードを語るとあまり面白くないのでここでは触れませんが、ともすれば陳腐な「とりかえばや物語」が、ロブシュナイダーが演じると抱腹絶倒になってしまうんだからすごいなーと思います。

その日一番観たい映画にはなり辛いけど、いつ観ても面白い映画ではあります。ツタヤなんかで何を借りるか迷ったときにオススメします。

以下は私の個人的な思い入れを語るので目をつぶって読んでください。

ヒロインを演じるレイチェル・マクアダムスは、「ミーンガールズ」でもイジワルな学園のクイーンを演じた、絵に描いたようなアメリカンブロンドガールで、私が個人的に大好きな女優さんです。メインの役として出演した映画本数は少なくて、ホットチックとミーンガールズぐらいなんだけど、女子高生役ばっかりやってる割にけっこういい歳っていうのもグっときます。イジワル顔もキレた演技も、どっちも上手で素敵です。

この映画の題材にもなっている、アメリカのハイスクールカルチャーって、妙に大人っぽくてアメリカナイズされた(アメリカだから当然だけど)部分と、所詮は十代のガキっぽい部分がごた混ぜになっていて、群像劇の素材としてすごく魅力的だと思います。

アメリカのハイスクールの、JOCKS vs NERDS (日本でいうところの、イケてるグループvsオタクなグループ、て感じ)の図式は、コロンバインハイスクールの銃乱射事件なんかでも注目された子供社会の問題で、ちょっと笑えない現実があったりします。で、最近の学園コメディものの映画では、JOCKSとNERDSの歩み寄りとか、JOCKSの凋落とか改心なんかが最終的に描かれたりしていて、それがカタルシスになってたりするんですが、この現象って、作り手の問題意識ってこともあるのだろうけど、表現者の多くはNERDS出身で、JOCKSに対するルサンチマンがあるってこともあるのかもなーなんて思いました。B級映画のパワーの理由がちょっとわかったような気がしたのでした。

Author

映画と猫と旅行が好きな
70年代後半うまれの女性

★Stars

★★★★★
何度でも観たい。
★★★★
おすすめ。
★★★
悪くない。
★★
人には薦めない。

観なきゃ良かった。

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