bee: March 2009 - Archive

SEX AND THE CITY

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やっと鑑賞。もともと、シーズン開始当初よりドラマシリーズを観続けていたんだけど、どうも映画を観る気にならず。こんなに時間が経ってからの鑑賞となってしまいました。

結論から言うと、ドラマシリーズのファンへのサービスということのほかに、CGで主演女優のシワを消してまで映画化する意義の見当たらない映画、というかんじでありました。

ドラマシリーズは一話30分という制限のなかに、恋愛に関わるひとつの命題を掲げ、それをドラマ仕立てで考察していくというもので、命題の着眼点の鋭さが共感を呼んで大ヒット。
で、大ヒットして予算が膨れ上がって、登場人物のライフスタイルやファッションにも注目が集まり・・・というあたりから何かがおかしくなったと私は思っています。
シーズンを重ねていくうちに、当初のソリッドなスタイルは忘れ去られてしまい、登場人物の人生主体のメロドラマに変容してしまい、これじゃただのメロドラマじゃないか・・・と視聴者のイラだちが募り始めたあたりで終了、という、ある意味で上手な幕引きがありました。

という風に、SATCの魅力を私は見ているので、これといった命題をベースラインとせずに2時間の平凡な恋愛映画として仕上げた今作は、本来SATCが持つ最大の魅力の真逆を張った作品になっている、という感想を持ってしまったのでありました。

登場人物のその後を知るという意味ではテレビシリーズのファンにとってはとても楽しく、豪華なアウトフィットも見ていて楽しくないことはないですし(モゴモゴした言い方なのは、わたしがパトリシア・フィールドの大仰なスタイリングが好きではないからです)、もうひとつのテーマとなっている「女の友情」を示す描写には、素直にいいなあと思わされます。だけどこれらの要素って、ドラマの2時間スペシャルで十分だと思います。ドラマとして楽しんで観ることはできたのだけど、劇場で見なくて良かった、とも思いました。

で、もっと個人的な意見を述べるならば。

40代の女性がウェディング前にはしゃぎすぎて、相手の男のマリッジブルーに気付かずに暴走した挙句、男に逃げられるっていう流れはちょっと悪趣味です。

トップメゾンのウェディングドレスや、ロサンゼルスのコンドミニアムや、アッパーイーストサイドのアパートメントといった豪華な小物や装置に騙されてしまう人は多いかもしれないけど、そういったシュガーコーティングを取ったら、かなり悲しい展開ではないかと思います。
もともとは、キャリアを手にした30代・40代のシティガールのクールな独身生活、がモチーフであったはずなのに、はしゃいだオバさんの結婚狂騒曲、という体になっているのが残念です。

「いろいろあったけど幸せになった」と「アホだけど幸せになった」では、随分印象が違います。

30代の魅力ある女性の独身生活、っていう、微妙な対象をモチーフにして、さらにそれをひとつの"アリ"なスタイルとして世に浸透させたという偉業を成し遂げたドラマの最後の"締め"がこの映画だというのは、あまりにももったいない話だなあと思う次第です。

なんだか文句ばっかりみたいになっちゃったんだけど、シーズン1からずっと観ていて、(途中までは)すごく好きなドラマだっただけに残念なんです。恋愛映画・ドラマ全般を好まないわたしにも楽しめる稀有なドラマだったからこそ、映画も「ほう!」となれるものであってほしかったです。

スポットで良かったこととして、主人公のアシスタント役で登場する、ジェニファー・ハドソンがとても魅力的でした。他の出演作品もぜひ観てみたいと思わされます。
あと、シャーロットの養女のリリー役の女の子もとってもとっても可愛らしかったです。

蛇足だけど、SATCは登場する4人の女性のキャラクターも社会的なポジションもバラバラ(ハイ/ローではなく、ハイな部分で横にバラバラ)なので、英語の口語表現の勉強になります。あと、それぞれのキャラクターのインテリアが素敵なのでなにかと参考になります。
そういったオマケ的なお楽しみも含め、ドラマシリーズはシーズン4あたりまでがおすすめです。

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★★★


SEX AND THE CITY [THE MOVIE]


SEX AND THE CITY season1

ドラゴンボール エボリューション ★★★
観たくない観たくないとダダこねて観にいったけど、そんなに悪くなかった。ふつうに家族向けのエンターテイメントムービーとしたらいいのではないかと。技法や映画文法の基本的なラインは当然ながらクリアしているので、鬼太郎とかどろろの実写に比べたら100倍まとも。エンディングテーマの浜崎あゆみは、うん、どうかと思った。

どろろ ★
いろんな意味で最低最悪の一本。気を抜くと罵詈雑言を書き連ねてしまいそうなので自重。

パイナップル・エクスプレス ★★
セス・ローガンもの。前編マリファナネタで見ているうちに飽きがきてしまった。
あとちょっとテンポ悪で寝てしまった。

ばかの方舟

| | TB-0
これはすごい。短期間に3回も見返してしまいました。

東京で商売(妙な健康飲料の自主販売)に失敗して借金を作った冴えないカップルが、もう一度商売をやり直すべくイナカに帰ってみたものの、全くうまくいかずにさらに駄目なことになる、というストーリー。面白くなさそうなストーリーなんだけど、最高に面白かった。

とにかく主人公の男のダメ人間設定の完成度の高さがすごい。その設定が緻密に脚本に浸透しているために、開始30分、二人の一挙手一投足に「学力がない」「常識がない」「センスもない」「その上に運も悪い」「それなのに根拠のない自信を持っている」ということを示す要素がぎっしりと、しかし自然に詰め込まれています。

説明的なセリフやシーケンスはほとんどないのですが、観る者に、主人公に限らず登場する人間の、主人公との関わりを、すんなりと理解させる巧みさにはびっくりしました。軽薄な表現だけど、「話題にもならないくらい些細な"あるある"」の連鎖と言えるかもしれません。そして、その"あるある"の切り取りと組み合わせのセンスが卓抜しているから、この映画が成立しているのだと思います。

ダメな主人公と、共依存的にくっついている恋人の女の子の、悲しいまでに滑稽で愚かな毎日は、基本的にはものすごく面白く、笑いの対象です。
だけどその中に、笑いながらも「ここ実はちょっと笑えないのはナイショにしときたいな・・・」っていう気持ちにさせられるものが含まれています。

"バカあるある"を笑うっていうことは、ある部分で自分を笑うことでもあり得るわけですから、フクザツな気持ちになってしまう箇所がどうしたってあるわけです。そしてそれって、ちょっとしたノスタルジーにも通じていく感情でもあるので、単純に「バカが滑った転んだを観てワハハと笑う」という類の映画をみたときとは異なる、深みのある後味を残す結果になっているのだと思いました。

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★★★★★
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Author

映画と猫と旅行が好きな
70年代後半うまれの女性

★Stars

★★★★★
何度でも観たい。
★★★★
おすすめ。
★★★
悪くない。
★★
人には薦めない。

観なきゃ良かった。

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