マリーアントワネット

| | TB-0
定期的に観たくなるソフィア・コッポラ映画。再鑑賞です。

この映画は、ソフィアの「アントワネットのヴェルサイユでの生活がこうだったらいいな」という、少女的な妄想の結実です。それをどう思うかは完全に好みの問題だけど、わたしは素晴らしいと思います。ソフィアは女の人が持っている、少女のころに夢見たこと、大人になってからはあからさまにはしないけど心のどこかに持っているものを、素晴らしい完成度でかたちにしてくれた英雄だと思います。
もっと言うと、フリルとレース一辺倒だった少女時代の妄想をベースに、その後のポップカルチャーとの出会いを経て複雑化した「お姉さんがたのガーリーな妄想」を、映画にしてくれた英雄だと思います。

つまりやってることは、タランティーノやウォシャウスキー兄弟といっしょ。っていうと男の人は怒るよねー、きっと。わたしはタランティーノもウォシャウスキー兄弟も好きだけど、不可逆かもね。男って狭量ねー。と、ガーリームービー鑑賞直後はだいぶフェミニンな思考になりますね。

歴史映画として観て文句たれてるやつはアホ、と以前のこのブログの一行感想に書きましたが、改めてそう思います。本来、アントワネットはアルコールのたぐいを口にしなかったとされていますが、シャンパンを飲んではしゃぐ場面があるのは、それがガーリームービーとして欠かせない要素だからです。舞踏会では貴族たちがジョイ・ディヴィジョンの ceremony で踊るし、ドレスを選んでいるときにチラっとコンバースのオールスターが映ります。こうしたカットで、ソフィアは明らかに、史実よりもガーリーアートムービーとしての図柄を優先させている、ということをわかりやすく宣言しています。だからその上で、これを歴史映画として観て、文句を垂れてるやつは、ドトールのコーヒーに文句つける本格珈琲好きみたいでアホだな、って思います。

「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という有名なセリフが、実はアントワネットの発言ではなかった、ということはあまり知られていない事実です。人は、200年も前のマスコミにすら翻弄されてしまう。であれば、アントワネットの暮らしを、ガーリーに仕立て描いた映画にどれほどの罪があるのかと思います。歴史的な浪費の女王として語られる反面、愛らしく夢見がちに語られることがあっても良いと思います。

お姫様、フランス、ドレス、マカロン・・・と、とにかくマッチョなむきには鼻で笑われる要素が満載で、公開当時はずいぶん冷淡なレビューを書いていたレビュアーも多かったなあという印象ですが、同時に、映画の価値はそのモチーフにあるわけではない、という明らかな事実を、この映画に関しては忘れている人が多かったのも事実ではないでしょうか。つまりそれだけ、マリーアントワネットとヴェルサイユ宮殿というモチーフが、無視できない大きなものであるということだと思います。

女性特有の、ふわふわとした夢のような思いを、映像化することはソフィア・コッポラという監督のもっとも得意とするところですが、そのモチーフにマリーアントワネットとヴェルサイユ宮殿という、究極にロマンティックにして巨大なモチーフを選んだこと、その困難に挑んだことが本当に素晴らしいと思います。そういう意味でこの映画は素晴らしいと思います。

その上で、この映画を好む好まないの問題は語られるべきだと思います。

-----

★★★★★

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: マリーアントワネット

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://hokahokagohan.net/mt/mt-tb.cgi/48

Author

映画と猫と旅行が好きな
70年代後半うまれの女性

★Stars

★★★★★
何度でも観たい。
★★★★
おすすめ。
★★★
悪くない。
★★
人には薦めない。

観なきゃ良かった。

Instagram

Monthly Archives